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個人の知識・スキル・経験を気軽に売り買いできる日本最大級のスキルマーケット「ココナラスキルマーケット」。多様なスキルが交差するこの巨大なホリゾンタル・プラットフォームにおいて、現在「Data & AI」領域を統括し、AIネイティブな体験への刷新を牽引しているのが、執行役員 VP of Data & AI の古田周平氏だ。
SIerでエンジニアとしてのキャリアをスタートさせ、リクルート時代にはイントレプレナーとして数々の新規事業や大ヒットアプリを生み出してきた古田氏。誰もが羨むキャリアを歩みながらも、なぜ彼は安定を手放し、当時まだ上場前で成長途上だったココナラというスタートアップ環境へと飛び込んだのだろうか。
「自分のミッションと会社のミッションの一致」に気づいた古田氏のキャリアの軌跡と、データとAIの力で実現しようとする「ココナラの未来図」に迫る。

古田 周平(Shuhei Furuta)
株式会社ココナラ 執行役員 VP of Data & AI
SIerにてシステム開発に従事した後、ビジネスや社会の仕組みを学ぶため法学部へ進学するという異色の経歴を持つ。その後、株式会社リクルートにて新規事業の立ち上げを牽引。自身が手がけたヘルスケアアプリはUS App Storeでもフィーチャーされる大ヒットに。2018年に株式会社ココナラにPMとして参画。機械学習(ML)チームの立ち上げや検索・推薦アルゴリズムの刷新を主導し、現在は約40名の専門組織を率いて全社のAI戦略を統括する。
略歴
株式会社ココナラ / 執行役員 VP of Data & AI (2025年11月~)/ 2018年8月 ~ 現在
株式会社リクルートテクノロジーズ(転籍) / プロジェクトマネージャー / 2016年4月 ~ 2018年7月
株式会社リクルートホールディングス / プロダクトオーナー・CTO / 2011年9月 ~ 2016年3月
早稲田大学法学部進学(ビジネスデベロップメントへのキャリアチェンジのため進学)/ 2009年4月 - 2011年8月
株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ / 標準基盤チームリーダー / 2006年4月 ~ 2009年3月
聞き手:フォースタートアップス株式会社 中田 莉沙

中田: 古田さんはエンジニアリングからビジネス領域へ、そして現在はData & AIのトップと、非常に幅広いキャリアを歩まれています。原点はどこにあったのでしょうか?
古田氏: 元々、プログラムなど「モノづくり」をしたいという思いが強くありました。ただ、モノづくりをする人間の宿命として、「自分が作ったものがどう使われるか知りたい」という欲求が出てくるんです。作りっぱなしではなく、そのシステムを使う人たちがどう思うのか、社会がどうなっているのかに興味がありました。
大きな転機になった強烈な原体験があります。SIer時代、銀座のとある大手百貨店の商品発注システムを、私が設計し、ほぼ一人で実装までやり切ったことがありました。自分でも「めちゃくちゃ素晴らしいプログラムができた」と自負していたのですが、なんとそれが半年かけて作ったのに「2日」で使われなくなってしまったんです。
中田: 2日で! それはシステムの不具合ですか?
古田氏: いえ、ビジネススキームの変更です。百貨店の統廃合があり、その事業自体が撤退になってしまったんです。自分が魂を込めて作ったものが使われなくなるということに、理不尽さや強い憤りを感じました。

もし、作ったものが100%生かされる世の中だったら、私はビジネスサイドには行かなかったと思います。しかし現実はそうではない。だからこそ、「なぜそうなるのか」というビジネスや社会の仕組みへの興味が湧き、自らビジネスの世界へ足を踏み入れる決意をしました。
中田: その後、リクルートへ入社し、新規事業を次々と立ち上げられました。
古田氏: リクルートは自ら手を挙げる文化があり、システム出身の私でも新規事業の責任者を任せてもらい、実績を出して信頼を得ていきました。
印象に残っているのは、ヘルスケアアプリの『RecStyle』です。当時、筋トレをする大人の男性のテンションが上がるようなかっこいいアプリが市場になかったので、「自分がど真ん中のターゲットになるサービス」を企画・開発しました。結果的にこれが大きく伸びて、AppleのUS App Storeでもフィーチャーされる成果を出せました。
中田: リクルートでヒットメーカーとして活躍し、さらに既存の巨大事業へと異動もされています。そこからなぜ、ココナラへの転職を考えたのでしょうか?

古田氏: 既存事業の組織は高度に専門化されていて、デザイナーやアナリストなど、その道のプロフェッショナルのレベルの高さに圧倒されました。ただ、私が唯一勝負できる武器は「アントレプレナーシップ」だと思っていたんです。
今後の人生で自分の力を一番発揮できるのは、「自分がど真ん中になる」、つまり事業のミッションやビジョンと自分自身が「一体化」できる環境だと気づきました。既存事業の領域(不動産など)に、残りの人生を捧げるほどのめり込めるかと問われたとき、少し一線を引いてしまう自分がいて、モヤモヤしていたんです。
中田: 様々なスタートアップを選択肢に持っていた中で、ココナラへの入社は異例のスピードで決断されたと聞いています。
古田氏: ココナラのホームページを開いてミッションとビジョンを見た瞬間に、「ビリビリッ」と電撃が走ったんです。
働く時間は人生の多くを占めます。その「働く」ということを通して、社会のインフラを作り、日本の働く人たちが幸せになれる仕組みを作る。このミッションに深く共感し、「こういう世の中を作れたらいいな」と心から思えました。
もう一つ大きかったのが、面接での会食です。創業者たちと私でご飯を食べたのですが、彼らがひたすら「ある漫画のエンディング」について、本気で喧嘩する勢いで議論していたんですよ(笑)。腹を割って率直に議論できるこのメンバーとなら、事業をやっていく毎日が絶対に楽しいと確信しました。

中田: 入社当初はPMとしてジョインされていますが、そこからどのようにして現在のData & AIを管掌するに至っていったのでしょうか?
古田氏: 入社して最初に任されたのはPMでした。当時、オンラインで集客する上で重要だったSEOが致命的な欠陥のある状態だったので、緊急対応リストを40個くらい作って即座に対応し、それが評価されて1年目にMVPをいただきました。
PMとして全体を見る中で、ココナラのプロダクトの「複雑さ」に気づきました。多様なスキルを扱うホリゾンタルなプラットフォームゆえに、UXの改善だけでは競合優位性は保てない。裏側で動いている「マッチングアルゴリズム」こそが競争力の肝になると確信したんです。
そこで、社長の鈴木に「マッチングアルゴリズムをやる部署を立ち上げさせてください」とSlackでDMを送ったら、翌日出社した時に「いいよ」と言われまして(笑)。最初は個人ミッションとして、機械学習を使った不正検知などの「守り」から始め、目に見える成果を出していきました。
中田: その成果が認められ、チームへと拡大していったのですね。

古田氏: はい。不正検知で成果を出した後、「この手法をマッチングやレコメンドにも適用すべきだ」と提案し、R&Dチームを作らせてもらいました。その後、検索ヒット率の改善やレコメンドアルゴリズムの実装など「攻め」の領域も拡大し、現在では「アセット&AI本部」という約40名の専門組織になっています。
特にマッチングにおいて重要なのは「信頼性の可視化」です。モノではなくスキルを買うという性質上、「この出品者にお願いして本当に大丈夫か?」という不安を払拭するため、過去の販売実績や納品率などのデータを可視化し、安心して購入できる仕組み作りに注力してきました。
中田: 今後、AIが当たり前になる時代において、ココナラはどのように進化していくのでしょうか?
古田氏: 生成AIが当たり前の時代において、プラットフォーム側がAIネイティブになっていなければ、ユーザーにとってマイナスでしかありません。ココナラの強みは「顧客データベース」「人材データベース」「取引・評価データベース」という3つのアセットです。これらをフル活用し、「働きたいと思った時にすぐ仕事が見つかる」「依頼したい時にすぐ最適な人が見つかる」という、息をするように自然で最高品質のマッチングを実現したいと考えています。

中田: キャリアを通じて、古田さんご自身のマインドセットに変化はありましたか?
古田氏: 大きなターニングポイントは、一人称が「自分」から「ココナラ」に変わったことです。
事業計画を立てる際、最初は「自分のキャリアにとってどうしたいか」というノイズが入ってしまっていました。でも、それではココナラのあるべき姿には辿り着けない。自分のエゴを捨てて、「10年、20年先にココナラが社会のインフラになった時、どうなっているべきか」だけを純粋に考えて事業計画を作り、ボードメンバーにプレゼンしたんです。結果、それが全社に響き、事業と自分が完全に一体化できた感覚がありました。
また、子どもが生まれたことも大きな変化でした。限られた時間で成果を出さなければならないため、「今、会社にとって本当に取り組むべきイシュー(課題)は何か」を見極める精度が圧倒的に高まり、結果として管掌領域も急速に広がりました。
中田: 最後に、キャリアの選択に迷っている次世代の挑戦者たちへメッセージをお願いします。
古田氏: 皆さんそれぞれ、実現したい社会ややりたいことがあると思います。それが大企業でフィットするならそれも素晴らしいことです。しかし、もし自分の実現したい世界と、事業が持つミッション・ビジョンが完全に一致する会社を見つけることができれば、これ以上幸せなことはありません。
自分が夢中になって働き、事業と一体化できる環境は、高い熱量と強いコミットメントを生み出します。もしそうした環境を探しているのなら、ぜひスタートアップというフィールドで、自分のミッションと会社のミッションが一致する場所を見つけるチャレンジをしてみてください。

「個」のスキルや経験を価値に変えるココナラ。その裏側を支えているのはAIというテクノロジーですが、仕組みを動かしているのは、自身が「働く」ことの挫折と成功を経験し、会社のミッションにのめり込んだ一人の情熱でした。
「誰かが何者かになる」そのきっかけは、古田さんがココナラのミッションに出会った時のように、自分の思いをそのまま投影できるミッションを持つ企業と巡り合うことから始まるのだと思います。
人生において、働いている時間は思っている以上に長いです。 だからこそ、その時間を「心から共感できるミッション」に注げる人を増やしたい。会社に自分の思いが吹き込まれていくような、そんなスタートアップで働くという選択肢を、これからも多くの人に届けていきたいと改めて感じました。

聞き手:
中田 莉沙(Nakada Lisa)
フォースタートアップス株式会社 コーポレート本部 人事専門役員
野村證券株式会社を経て、2018年に株式会社ネットジンザイバンク(現 フォースタートアップス株式会社)に参画。エンジニア支援室長や事業開発、プリンシパルなどを歴任。2025年より COO室 シニアマネージャーとして自社の中途採用・新卒採用を牽引。「Startup Lights」発起人として、成長産業における組織多様性の向上やエコシステムの発展に尽力。2026年4月よりコーポレート本部 人事専門役員に就任。
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