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Recustomer株式会社のCTO、眞鍋 秀悟氏のキャリアは、常に”最も困難な道”を選択する連続だった。ファーストキャリアのフィックスターズ社に始まり、Mujin社、Preferred Networks社──という国内屈指の技術者集団の企業で実績を重ねてきた彼が、予期せぬキャリアの挫折を経て、次なる挑戦の場として選んだのは、”最も困っている”、つまり”最も自分が必要とされている”と感じたスタートアップ、Recustomerだった。
なぜ彼は、安定や約束された成功ではなく、混沌の渦中へ自ら飛び込むのか。その答えは、困難を楽しむ彼ならではの視点にあった。その挑戦の軌跡が評価され、先日「Startup CTO of the Year 2025」でオーディエンス賞を受賞した今、彼の哲学にあらためて迫る。

眞鍋 秀悟(Shugo Manabe)
京都大学大学院 情報学研究科を修了後、キャリアをスタート。株式会社フィックスターズで大規模組織のマネジメント、株式会社Mujinでアーキテクトとして技術の限界に挑戦し、株式会社Preferred Networksでは経営視点を獲得。その後、株式会社HacobuにてCTO室室長として組織を牽引。一度の転職を経て、2023年にRecustomer株式会社へCTOとして参画。開発組織を1年で劇的に変革し、事業成長を牽引している。
【略歴】
Recustomer株式会社 / 取締役CTO / 2023年12月 ~ 現在
want.jp株式会社 (VPoP : Vice President of Product) / 2023年9月~11月
株式会社Hacobu / CTO室室長 兼 研究開発部部長 / 2021年11月 ~ 2023年8月
株式会社Preferred Networks / エンジニアリングマネージャー / 2019年5月 ~ 2021年10月
株式会社Mujin / アーキテクト / 2017年8月 ~ 2019年4月
株式会社フィックスターズ / エグゼクティブエンジニア / 2012年4月 ~ 2017年8月
聞き手:フォースタートアップス株式会社 外嶋 伸大(Shinta Toshima)

外嶋: これまでのキャリアを拝見すると、常に高難易度の環境に身を置いてこられた印象です。CTOという役割を意識し始めたのは、いつ頃からだったのでしょうか。
眞鍋氏: 自分のキャリアを振り返ると、大きく二つのフェーズがありました。フィックスターズからMujinまでは、純粋に技術的な深さや組織のスケールという課題に没頭していました。特にMujinでは、ロボットという難しい技術の社会実装がとても大変で、がむしゃらに食らいついていきましたね。
眞鍋氏: 転機が訪れたのは、Preferred Networks(PFN)への転職です。入社早々にCEOやCTOなどと新規事業を立ち上げるためのプロジェクトに参画でき、初めて「経営」という視点を手に入れました。技術がいかに優れていても、それが事業として成立しなければ意味がない。市場やビジネスモデルを理解し、経営者と対等に議論する経験は、エンジニアリング一筋だった僕にとって大きな衝撃でした。
外嶋: その経験が、HacobuでのCTOへの志向に繋がっていくのですね。
眞鍋氏: まさにそうです。HacobuではCTO室室長として、初めて経営会議にレギュラーで参加するようになりました。PFNで得た視座を持って経営の現場に身を置く中で、僕のキャリアを決定づける出来事が起こります。OpenAIによるChatGPTの発表です。

眞鍋氏: テレビもネットも、誰もがChatGPTの話題で持ちきりでした。僕は「世界が根底から変わる。会社がどうなるか分からない」という、興奮と同時に恐ろしいほどの焦燥感に駆られました。「今すぐ動かなければ、この波に乗り遅れる」と。しかし、経営会議での議論は、物流という業界の特性上、どうしても慎重で、変化のスピードは緩やかでした。それはビジネスとしては正しい判断だったかもしれません。でも、僕の技術者としての直感は「今すぐ舵を切るべきだ」と叫んでいた。
眞鍋氏:その時、痛感したんです。「どんなに正しい意見を述べても、最終的な決定権がなければ意味がない」と。この歴史的な転換点で、ただの提案者でいることは耐えられなかった。自分が会社の技術戦略の全責任を負い、事業の未来を左右する意思決定を下す。そのポジション、つまりCTOに就かなければ、この焦燥感は決して消えないと確信しました。それが、僕が明確にCTOを目指すようになった瞬間です。

外嶋: Hacobuの後、一度want.jp社へ転職されましたが、そこからRecustomer社へ移られるまでには、大変なご経験があったと伺っています。
眞鍋氏: そうですね。Hacobuから次の挑戦の場としてwant.jpへ移ったのですが、事業状況の急激な変化に直面し、再び転職活動を余儀なくされました。正直、自分のキャリアとしては厳しい状況でした。しかし、立ち止まっている時間はありません。すぐに気持ちを切り替え、再び外嶋さんにご連絡させていただきました。
外嶋: なぜ再び、私にご相談をいただけたのでしょうか。

眞鍋氏: たくさんのエージェントがいる中で、(フォースタートアップスでヒューマンキャピタリストとして活動する)外嶋さんは僕の知らない、「思いがけない領域」の面白い求人を持ってきてくれるからです。多くのプラットフォームでは知っている会社の名前が並びますが、外嶋さんが提案してくれたのは、僕の挑戦心を掻き立てるような、意外性のある会社ばかりでした。僕の「困難な課題にこそ価値を感じる」という性格を見抜いた上で、最適な選択肢を提示してくれる。その信頼感が、再び相談させていただいた一番の理由です。Recustomerも、その時に提案してもらった一社でした。

外嶋: 数ある選択肢の中から、最終的になぜRecustomerを選ばれたのでしょうか。
眞鍋氏: 一番”正直”で、一番”困っている=助けを求めている”会社だったからです。CEOの柴田は、会社が目指す壮大なビジョン・明るい未来の話だけでなく、現在向き合っている厳しい状況や開発組織の課題を一切隠さずありのまま伝えてくれました。深夜まで続くミーティング、伸びるスタッツと反比例するように疲弊していく現場…。「この会社を救えるのは、自分しかいない」と直感しました。僕にとってスタートアップの醍醐味は、みんなで助け合いながら一つの目標に向かう”文化祭のノリ”なんです。だからこそ、弱さを見せて「助けてほしい」と言ってくれる場所に、強く惹かれました。
外嶋: CTO就任後、わずか1年で組織は劇的に変わりました。まさに革命的です。
眞鍋氏: 最初にやったのは、システム障害対応の全てを自分一人で引き受けることでした。チームには新規開発に集中してもらい、僕は3ヶ月でバグの根源を絶ちました。次に、開発の「舵取り」です。「顧客からの要望」と「実装の容易さ」のマトリクスでタスクを可視化し、最もインパクトの大きいものから着手する文化を根付かせました。結果、今では毎週必ず新機能をリリースし、月に一度は大型アップデートを12ヶ月連続で実現しています。

眞鍋氏: その成果は社外からも高く評価されており、開発組織のパフォーマンスを可視化するサービス「Findy Team+」のアワードを2年連続で受賞。さらに2025年10月には、多くの支持を集めて「Startup CTO of the Year 2025」でオーディエンス賞を受賞することができました。しかし、何より嬉しいのはチームからの言葉です。エンジニア全員が、「眞鍋さんがいなかったら会社は潰れていました」と絶対に言ってくれるんです。数々の危機を、みんなで乗り越えられた証です。マネジメントはコンピュータですからね。
外嶋: どういうことでしょう? 非常にユニークな考え方ですね。
眞鍋氏: 昔のプレイステーション3は、性質の異なる2種類のCPUを積んだ革新的なマシンでした。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すプログラミングはあまりに難しく、後継機では汎用的なCPUに戻ってしまった。たった2種類のプロセッサを扱うことすら、これほど難しいのです。翻って、我々が向き合う「組織」は、一人ひとり全く異なる人間という”プロセッサ”の集合体です。この複雑怪奇なシステムを理解し、全員の力を100%引き出すことができれば、それはコンピューターサイエンスの未踏領域に到達することに等しい。僕にとって組織作りとは、この世界で最も難しく、挑戦しがいのあるパズルを解くようなものなんです。

外嶋: 組織が安定し、成長軌道に乗った今、Recustomerの未来をどう描いていますか?
眞鍋氏: スタートアップの最初のフェーズは、簡単な機能を早く市場に出すことです。我々はそれを乗り越えました。次に来る使命は、PMF(プロダクトマーケットフィット)したプロダクトを基盤に、他社が容易に真似できない”難しい機能”を確立することだと考えています。例えば、AIを活用した機能や、複雑な決済機能、あるいはハードウェア連携なども視野に入れています。
眞鍋氏:幸い、僕のこれまでのキャリアは、AI、ハードウェア、機械学習といった領域に強みがあります。CTOとして、それらの知見を総動員し、今のRecustomerの体力で実現可能な、最もインパクトのある難易度の高い領域に挑戦していく。それが、事業の非連続な成長に繋がると確信しています。僕の力を使って、会社を次のステージへ大きく飛躍させることが、今の中長期的な目標です。

外嶋:最後に、次の挑戦者たちへメッセージをお願いします。
眞鍋氏: これから挑戦しようとしているあなたに伝えたいのは、「変化を起こせるのは、君しかいない」ということです。人生の転換点となるボールは、今あなたの目の前に転がっている。それを取りに行かないんですか?たしかに、スタートアップはとても大変です。世の中には、もっと楽で給料の良い仕事はたくさんあるでしょう。でも、それは「思い出」として面白いか? 僕の答えはノーです。苦労の先にこそ、「これをやったのは自分だ」と誇らしく語れる未来が待っている。たとえ事業が成功しなかったとしても、やりきったという誇りと、そこで得た圧倒的な力は、他のどんな境でも手に入らない、あなただけの財産になります。スタートアップは、「壊れかけた飛行機を作りながら飛ばしている」ようなものです。そのプレッシャーの中でしか、本当の自分は強くならない。そのスリルを、ぜひ味わってみてほしいと思います。

眞鍋さんとお話させていただいた内容はどれも印象的ですが、特に「組織とコンピュータは同じ構造で出来ている」という話が印象に残っています。また、「組織はコンピュータよりも複雑だからこそ、面白い。」と伺った際に、眞鍋さんであれば、CTOとしてスタートアップの事業成長を支えていく上でどの様な苦難が降り掛かろうとも、組織を前へ向かせられるエネルギーを持っている方だなと感じていました。
眞鍋さんになぜそこまで難しい挑戦を何度も行うのか? と伺った時に、「老後に、縁側であの時の苦労話をしたいから」と仰られていました。その言葉には、困難さえも楽しむ圧倒的な当事者意識があってこその言葉だと思います。Recustomerという”最難問”に挑む彼の挑戦は、多くのエンジニアやビジネスパーソンにとって、キャリアの本質とは何かを問い直すきっかけとなるに違いないと確信しています。

外嶋 伸大
シニアヒューマンキャピタリスト
フォースタートアップス株式会社に入社し、成長産業支援に従事。
月20人ほど若手優秀層-エグゼクティブな方々まで幅広くお会いし、40社以上のVC/CVCなどのプロの投資家より期待が寄せられている急成長スタートアップを中心としたお引き合わせに尽力。
直近では、エンジニア支援プロジェクトのプロジェクトオーナーとして、日々CTO/VPoEの方々と開発組織の採用支援に向けて活動中。