「誰にも負けない強みを持ちながら、新たなことへのチャレンジを恐れない」メルカリ Marketplace COO 長利 一心 氏が語る、経営者としての"深化"と"進化"

2024-06-19

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*2023年11月29日時点
長利 一心(Kazushi Osari)
京都大学大学院航空宇宙工学専攻修了。戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニー マネージャー、株式会社セガゲームス社長室長を経て、2018年3月メルカリに参画。ファイナンスIRグループ、リスク・コンプライアンスグループ、ガバナンスチームのコーポレート各所でメカニズム構築やプロジェクト推進をしたのち、2019年7月より経営戦略室(元会長室)ディレクター。2020年2月よりメルペイの取締役VP of Corporateにて財務、経営企画、法務、コンプラ、リスクを管掌。2022年1月より執行役員 Marketplace COO、2024年1月より執行役員Japan region COO兼務。

長利さんのビジネスパーソンとしての転換点

まずは長利さんのこれまでのキャリアの変遷を教えてください。

京都大学の大学院を卒業した後、新卒で外資系コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニージャパン・インコーポレーテッド(以下、ベイン)に入社しました。ベインでは戦略コンサルタントとして全社戦略策定などに従事し、マネージャーとして最大10名規模のプロジェクトをマネジメントしていました。

その後、株式会社セガゲームス(以下、セガ)で社長室長としてコーポレートの企画系機能全般を担当していました。市場調査や予算策定だけでなく、社内会議体運営、渉外、ガバナンス、広報、知財戦略など幅広く管掌していました。それから株式会社メルカリ(以下、メルカリ)にファイナンス・IRマネージャーとして入社し、リスクコンプライアンスマネージャー、ガバナンスマネージャー、メルペイとメルコインの取締役を経て、現在はメルカリ執行役員 COO Marketplaceとしてコーポレートとビジネスサイドを管轄しております。

多くのCxOの方が専門性を尖らせてキャリアを築いています。長利さんは、外資や日系、大企業やスタートアップも経験され、業界業種を横断したキャリア形成が特徴的ですが、何が転換点となりましたか?

外資系のコンサルから事業会社のセガに転職したことが大きかったです。ビジネスパーソンとしての総合力をつけるためにコンサルに入社し、シニアマネージャーにまで昇進を重ねていく中で、一通りコンサルとしてプロジェクトを動かせるようにはなりました。

一方で、コンサル会社の中で更に肩書きを高めていくにはプロジェクトをサクセスするだけでなく、自ら売り込んで獲得してこなければならないのですが、事業会社の経験をしたことがない私が本当にプロジェクトを売ることができるだろうかという疑問もありました。

漠然と事業会社への転職を考える中で、マルチタスクで自分をチャレンジさせてくれる点と、日本企業で伸びているジャンルの中で自分が好きなゲームを作っているという点で、セガを選びました。

新卒で外資コンサルを選んだ理由はなぜですか?

大学院には、メーカーの研究職への研究室推薦枠が当時いろいろとありました。航空宇宙系の研究はいわゆる総合工学なので、トヨタ自動車などの大手や、重工系の企業への推薦もありました。そんな中、だったらもっと色々と他の選択肢を見た上で決めたいと思い、研究そっちのけで就職活動に打ち込みました(笑)。

私が就活していた時はメガバンクや証券会社、広告代理店に行くことが王道でした。外資系コンサルはすぐ解雇になるのでやめなさいと親に言われるような時代でしたね。他には電通も受けましたし、パイロット、アナウンサー、色々な業種の面接を受けました。

その中でJAXAも受けていて、その時文科省管下からJAXAが独立行政法人化したタイミングで、僕の中では色々なことが新しくなったのだろうなとワクワクしていたのです。ところが、「昔と何も変わらないから安心してくださいね」といったことを言われて逆に不安になったというか、今のタイミングで宇宙開発系に進むのは違うなと感じました。

じゃあ何をやろうか、と考えた時に、ビジネスの仕組みというかメカニズムを学んだ方がいいんだなと思いました。色々な経験や、機会に恵まれたいなと思っていて、外資コンサルというのは頭も使うし、コミュニケーション能力も使うし、チームプレーでもあるので、自分の力を隅々まで使えそうだなという感覚がありました。今後、宇宙開発にはビジネス視点が必要だという思いと相まって、最初のキャリアはコンサルにしようと決めました。

コンサルから事業会社に転職をして色々とギャップがあったと思いますが、一番の困難を挙げるとするとどんなことが思い浮かびますか?

コンサルのプロジェクトの中でも、僕はクライアントの会社に常駐して一緒に仕事をすることが多かったので、コンサル以外の方との協業に抵抗はありませんでした。戸惑ったのは、事業会社の人事制度に組み込まれたときに、モチベーションが違う人が自分の評価対象になることでした。一言で言えば色々な価値観を持った人たちと仕事をしていく大変さというのでしょうか。コンサルであればクライアントやチームメンバーがいつかは変わるのですが、事業会社ではそれがないので、組織の中でやっていくしかありません。組織を自分で作っていく必要があるということに最初は苦労しました。 

スタートアップとの出会い

セガからメルカリへの転職をする時はどのようなきっかけがありましたか?

自社の事業にも、自身のキャリアとしても伸び悩みを感じていた時に、ナイアンティックへ面接に行く機会がありました。スタートアップ企業だったナイアンティックが「ポケモンGO」を開発し、月商50億円、100億円という凄まじい売り上げを記録しているタイミングで、それなのにマンションの一室で数人で運営していたんですね。

一方で、セガネットワークスでは数百人のスタッフがいて、「月商数億円のタイトルがいくつか出た」ということに色めきだっていました。その2社のギャップにすごく衝撃を受けて、自分は変わらなきゃいけないと感じたんです。セガという事業会社でコーポレートはやり切った感覚もありましたし、やっぱり自分はバックオフィスからビジネス側に行かなきゃいけないんじゃないかという問題意識も持っていました。それでより本格的な転職活動をスタートしました。

転職はスタートアップ企業にしぼっていたのですか?

ナイアンティックに触発されてスタートアップ企業に興味をもったタイミングで、フォースタートアップスさんからも色々ご紹介をいただきました。ただ、事業側の経験がなかったのでビジネスサイドではメンバークラスのポジションしかなく、やはり自分の道はそこにはないんだなという現実を知りました。一旦は現職に集中をしようと考え、メルカリも辞退しようとしていました。その連絡をフォースタートアップスの恒田さん、岡本さんに伝えたら、「まずはオファーが出るまでやってみましょう」と背中を押され、メルカリの社内の色々な人と会って話をさせていただきました。

ビジネスサイドへの転向を希望しながらメルカリではファイナンスマネージャーとして選考に進まれていますが、どのような心境の変化があったのですか?

決め手になったのは、メルカリの小泉さんとお話をした時に、メルカリにはルールやプロセスがなく、「バリュー3つで会社を運営する」という壮大な社会実験をしている感じと言われたことです。「ルールやプロセスを細かくして運用する証明された経営は、他の会社や大企業に任せておいて、3つのシンプルな行動規範でどんな会社や組織が作れるかということを試しているんだよね」と聞いて共感しました。

私はコンサルでもセガでも、物事を細かく管理して、画一的なパフォーマンスを是として結果を残すという手法しかやってこなかったけど、組織とか人っていうのはそういうことじゃないよなとずっとどこか疑問を感じていたんです。最低限のルールや共通の価値観の中で、1人1人のタレントが光る時にこそ、組織の醍醐味があるはずだと感じました。

コンサルの時にやりきったなと思ったことや、セガで感じたキャリアの頭打ち感ということは思い違いだったかもしれない。メルカリでコーポレートとしての組織作りにチャレンジし、やりきってから事業側に行っても遅くないじゃないかという気持ちになり、今までのやり方と全然違う会社作りがメルカリでなら出来ると思いジョインを決めました。 

ファイナンスマネージャーとして入社し、最終的には希望していたビジネスサイドへ転向されるという一般的には難しいことを、長利さんができたのはなぜだと思いますか?

メルカリという環境だからということもありますが、多種多様な業務を短期間で経験できたことがあると思います。

最初は予算策定をやるべくファイナンスチームのマネージャーとして入社しました。入社して4ヶ月が経過し、計画と実績を照らし合わせる時期になった時に「次はリスクコンプライアンスをやってくれないか」という話をもらいました。全く経験していない領域だったので最初は戸惑いました。手探りながらも業務を行っていき、一定の体制が作れてきた時には、自分の担当がガバナンス領域になっていました。その後ガバナンスの延長線で、今もメルカリで使われている経営管理ツールをデザインしたりと、3ヶ月とか半年スパンで目まぐるしく業務が変わっていきました。

最初のファイナンスでの仕事もやりがいがあったので、リスクコンプライアンス業務に携わることは予想外でもあったのですが、結果として、リスクコンプライアンス、ガバナンス、経営戦略を一通り経験することが出来ました。

ファイナンスから リスクコンプライアンスに大きくピボットするという、半ば無理やりな キャリアチェンジがないとそこには繋がらなかったと思っているので、入社4ヶ月目の意外な人事が 2年後メルペイ取締役としてコーポレートとリスクコンプライアンスを管掌するという形に繋がったのは、本当に良かったなと今となっては思っています。

長利さんのキャリア形成で大切にしていること

重要な意思決定をする時に、長利さんが大切にしていることはなんですか?

行き詰まった時に自分に何が足りないかを見つめ直し、「次はこういうことをやりたい」と周囲に意思表明をし、行動に移すことだと思います。

コンサルから事業会社、事業会社からスタートアップと経験した自分のキャリアを振り返ると、「これが自分に決定的に欠けている」ということを認識したり、問題意識を自分の中に持ってアクションを起こしていることで回り道の少ないキャリア形成が出来たかなと思います。

お話を伺っていると、自分の出来ること・出来ないことの客観的分析が得意でいらっしゃると思うのですが、何かコツはあるのでしょうか? 

日記を書くのが好きで。毎日書くというよりは自分の考えを大学ノートに書き、モヤモヤしたことを言語化して自分なりに整理して、納得していくという作業が好きだったんですよね。中学校とか高校の時からやっていて、社会人になってからはさすがにやらなくなりましたが、そこに自己分析のルーツはあると思います。やり続けているから、今では書かなくてもなんとなくできるようになって、キャリアや仕事においても考えて、整理をするということは活きてると思います。

キャリア形成について部下や周囲に伝えていることはありますか? 

メルカリという会社だからかもしれないですが、「自分の次の選択肢を3つぐらい用意しておきましょう」という話をよくしています。

メルカリはスピード感のある会社なので、自分でやりたいことや出来ることを表明しないと埋もれてしまう。「経営戦略まで来たので、次はいつか役員になりたいです」とか、具体的なビジョンを思い描いてないと、自分が次に何を経験をしないといけないかとか、どんな不得意を埋めなきゃいけないかということが分からない。広げるのはファンクション軸なのかドメイン軸なのか、あるいは今のポジションで深めていくのか、といったことを常に考えておくことが必要だと思います。

私はとにかく広げた方がいいという考えが固定概念としてはあったので、そういう思考になりやすかったのですが、広げた方が良いと思わない人もいる。その場合もっと深めるには?といった話や考え方もするようになりました。

キャリアを広げた方がいいという考えは怖いという方も多いと思います。長利さんはなぜ広げるという選択肢を取れるんでしょうか? 

私の幼少期からの経験がそうさせているのだと思います。2歳下の弟がいるんですが、弟の方が足も早かったし、手先も器用だったし、 顔も良くてモテて(笑)、幼少期からコンプレックスを抱えていました。私が何かで一番になることはないけど、色々なことが出来ることがアイデンティティなんだなと。とはいえ、実はビジネスパーソンとしては、そんなにたくさんのことってできないと思っています。

私は徹底的なプロジェクトマネジメント力と、数字から事業を読み解いて方向性を定める力という、コンサルで鍛えてもらったこの2つの能力だけで今も仕事をしていると思っています。

組織ではそれぞれの得意分野があって会社を動かしているので、ひとりでたくさんのことをする必要はない。でも、できることは誰にも負けちゃいけない。それを軸にして、いざとなれば能力を徹底的に使い回し、そこを軸足に周辺領域に染み出すということを意識をしています。

経営者として大切にしている考え方

経営者として大切にしていることを教えてください。

自分の専門性や強みを徹底的に尖らせていってそれを応用しながら広い仕事をしてきたキャリアの前半戦から比べると、メルペイで執行役員になって「経営」に携わるようになった時に1段違ったことが求められ始めたように感じます。それは、どんな議論をするにしても主語は必ず「事業全体」になるということです。

例えば経営会議のアジェンダの中で人事制度の話が出た時には、人事制度の専門家ではなくても経営者として意見を持つべきだと思います。意見や考えに責任をもつ領域を限定しなくなる脱皮が経営者になるための重要な進化なのかなと思います。逆説的ですが、脱皮して領域を広げていくためには、自分が経営にとって貢献できる得意領域が重要になってきます。それが自分の強みを深化させていくということだと思います。

 長利さんにとってスタートアップで働くということはどういうことですか?

おそらくほとんどのスタートアップに共通するのは「人が足りていない」ということで、状況がすごいスピードで変わり続け、業種関係なく仕事はできる人に降ってくるので、その環境が自分のキャリア形成にすごく向いていると思います。ファンクションだけでなく、複数の領域にまたがることで見えてくる景色を経験できました。

キャリアを広げる機会と、その高さを両立出来ることがスタートアップの醍醐味だと思います。僕みたいなコンサルを経験してきたキャリアの人は、マルチタスクで色々なことを同時並行して処理する能力と新しい領域への適応能力に長けていると思うので、挑戦して対応していくうちにキャリアップしていけるという魅力もあるのではないでしょうか。

最後に、スタートアップのCXOを目指す人へのメッセージをお願いします

応用領域を広げることでの強みの磨き込みを意識されるといいのではと思います。その強みを極めることで、自分の専門性を持って広がりを持てるようになり事業全体を考えることができるようになり、経営者としての視座につながります。主語を自分から会社全体、事業全体へと高める意識を持つことが大切だと思っています。

編集後記

恒田さんと私が初めて長利さんにお会いしたのはフォースタートアップスがまだ株式会社ネットジンザイバンクのころで、面談したオフィスもアークヒルズフロントタワーRoPの一室でした。

今でこそ戦略コンサルや大企業から未上場スタートアップへの転職は多くなってきましたが、2017年当時はまだ前例も多くない中、長利さんは最初からスタートアップを検討に入れられていたのがすごく印象的で、恒田さんと長利さんの共通の知人が数名いらっしゃったこともあり、メルカリとのお引き合わせをさせていただきました。

メルカリとの相性は最初からよかったものの、転職活動を進められる中でご家族が増えることがわかり、そもそも今このタイミングで転職をするのか悩まれていた時もありましたが、当時コーポレートの責任を担ってらっしゃった方数名と何度もお会いする中で覚悟が徐々に決まっていかれたように思います。

メルカリ入社後は専門性を活かしつつ、リスク・コンプライアンスグループ、ガバナンスチーム、メルペイのコーポレートヘッド、メルカリの執行役員など次々と役割を広げられていき、長利さんのベースのスキルの高さもさることながら状況に合わせて自身を変化させてこられてきたことがインタビューでも窺い知ることができました。

- 岡本 麻以(フォースタートアップス株式会社 プリンシパル)

長利さんをご支援したヒューマンキャピタリスト

恒田 有希子(Yukiko Tsuneda)
フォースタートアップス株式会社 取締役副社長 兼タレントエージェンシー本部長 兼オープンイノベーション本部長
株式会社サミーネットワークス入社後、株式会社メタップスに入社。同社の事業統括責任者を経て、2016年10月に株式会社ネットジンザイバンク(現フォースタートアップス株式会社)に参画、2018年4月に執行役員就任後、タレントエージェンシー本部を統括。2019年に取締役就任。2020年に公益社団法人経済同友会入会。2021年より常務取締役就任。第17回グロービス アルムナイ・アワード「創造部門」を受賞。経済同友会オープンイノベーション委員会、共助資本主義の実現委員会、副委員長。
岡本 麻以(Mai Okamoto)
タレントエージェンシー本部 営業戦略グループ プリンシパル
立命館大学大学院修了後、東証プライム企業を経て、2016年にフォースタートアップス株式会社の前身である株式会社ネットジンザイバンクに入社。2020年よりタレントエージェンシー本部における営業戦略室の室長として法人営業における月/四半期 /年毎の戦略策定、法人担当のアサイン、新規取引企業の契約判断に従事。累計2,000名を超えるキャリア面談を実施、年収2,000万円を超えるハイレイヤー/CxOポジションへの支援実績を持つ。
https://www.forstartups.com/services/talent-agency/principal/okamoto-mai
EVANGE - Director : Kana Hayashi / Creative Director : Munechika Ishibashi / Interviewer : Mai Okamoto / Writer : Kozue Nakamura / Editor:Daisuke Ito / Assistant Director : Makiha Orii / Photographer : Shota Matsushima
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