EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。フォースタートアップスのEVANGE運営チームです。私たちが所属するフォースタートアップスでは累計1,800名以上のCXO・経営幹部層の起業や転職のご支援*をはじめとして、多種多様なビジネスパーソンを急成長スタートアップへご支援しています。EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。
「この先を想像して、より変化の大きいことにチャレンジしたかった」。そう語るのは、株式会社プレイドで執行役員 CVO(Chief Value Officer)を務める柳澤 佑氏だ。コンサルティングファームのアクセンチュアで20年超の経験を積み、マネージング・ディレクターとして輝かしいキャリアを築いてきた彼は、なぜ安定した道を離れ、スタートアップへの挑戦を選んだのか。
入社時に決まっていたのは「プレイドの経営の一角を任せたい」ということだけ。具体的な役割さえ未定のままプレイドにジョインし、自ら課題を見つけ、組織を創り、同社の「第二創業期」とも言える変革の旗手を担っている。
大企業からスタートアップへ。そのキャリアチェンジの裏にあった葛藤と、彼がプレイドで見据える「CX(顧客体験)の未来」とは。同社の祖業で主力プロダクトである「KARTEの次を作る」フェーズにある柳澤氏の挑戦と、これからのキャリアを考える人へのメッセージを紐解く。
(インタビュアー:フォースタートアップス株式会社 黒田 拓海、仁木 紫援)
柳澤 佑 (Yu Yanagisawa)
株式会社プレイド 執行役員 CVO (Chief Value Officer)
2001年にアクセンチュアに入社し、20年超に亘り戦略立案、新規事業立上げ、マーケティング・CRM改革などに従事。2020年よりCXを起点とした事業変革を推進するAccenture Songにて金融サービスを統括。2023年プレイドに参画し、成長戦略立案、事業開発、グループシナジー創出による成長推進などを担当。2025年より執行役員 CVOに就任。
黒田: アクセンチュアで約20年にわたり素晴らしいキャリアを歩まれてきた中で、なぜ転職を考えられたのでしょうか?
柳澤氏: 5年ごとに「このまま中に残るか、外に出るか」を考えるようにしていました。15年を過ぎたあたりから、クライアントと直接向き合う仕事よりも、どうしても組織の管理のような「内向きの仕事」の割合が増えていると感じていました。もちろん、管掌組織や責任範囲の大きさに変化はありましたが、この先15年、自分のやるべきことが「想像できる世界」になってしまった。
マネージング・ディレクターとして次に何が起こるか、どういうステップを踏むのかが、ある程度見えてきてきました。アクセンチュアでの仕事は好きでしたし、環境にも恵まれていました。しかし、このまま進んだ先にある自分の姿が、今の延長線上でしかないと思った時に、ふと立ち止まってしまったんです。
変化の激しい時代に、むしろ変化がない環境で自分が変わらないでいることのリスクの方が大きいのではないか。
そう感じたのが、大きなきっかけですね。私の根底には常に「クライアントの課題解決に貢献したい」という思いがありました。その原点は、新卒の就職活動で「僕は幸せになりたいんです」と少し青臭いことを言っていた自分にあります。世の中に良いサービスや商品が増えれば、人々の生活は豊かになり、楽しくなる。その思いをより広く実現したいという気持ちが、コンサルタントとしてのキャリアを支えていました。だからこそ、もっと直接的に、顧客と向き合える環境に身を置きたいと考えました。
黒田:数ある選択肢の中から、プレイドを選ばれた決め手は何だったのでしょう?
柳澤氏: プレイドでは最初から「この役割をやってほしい」という明確な提示がありませんでした。代表の倉橋と話した際に言われたのは、「創業から取締役が変わっておらず、自分たちが会社の成長の限界になっているかもしれない。全く違う視点で経営を考えてくれる人が欲しい」という、非常に抽象的で、率直な悩みでした。
仁木:オファー時点でも役割は未定でしたよね。
柳澤氏: はい。何を任せられるか決まっておらず、配属先さえ入社3週間前まで決まっていなかった。でも、僕にとってはそれが逆に魅力的でした。「この役割をやってもらいたい」とガチガチに決まっているより、「色々できそうだぞ」という期待が持てました。
面談というより、倉橋や取締役の高柳とは10回近くディスカッションを重ねました。「いまのKARTEをたくさん売ってほしい」と言われていたら、きっとお断りしていました。そうではなく、「やりたいけど、できていないことがにたくさんある」という様々な可能性と課題を聞き、プレイドが持つデータを活用すれば「あんなこと、こんなことができるんじゃないか」と議論するのが、純粋に楽しかったんです。そのような問いに対して思考を深め、一緒に考えてくれる人を求めている感覚が伝わってきました。
決め手の一つに「余白」の話があります。プレイド経営陣が語る会社の未来には、意図的に作られた「余白」がたくさんあった。それをどう埋め、どんな色を付けていくのか。そのプロセスに、自分も当事者として関われることに大きな魅力を感じました。
(プレイドのオフィス。手前は芝生ゾーンでオフィス内に壁はなく開放感に溢れる。)
黒田:入社後、ご自身の役割をどのように確立されていったのですか?
柳澤氏: 最初は「CEO Office」にいました。そこは組織というより、それぞれがテーマを持つ“ピン芸人”の集まりのような場所で(笑)。それぞれが倉橋と話してテーマを決めて動く、というスタイルでした。でも、個人がバラバラに動くのではなく、組織として経営課題に取り組むべきだと感じ、オフサイトミーティングを提案・企画して、組織のミッションを定義することから始めました。人を巻き込み、組織としての活動をちゃんと作っていく必要があると思ったんです。
その活動の一つが、プレイドの成長戦略や新たな価値創出を強く推進する「Value Design Department」の立ち上げにつながっています。
黒田:具体的にはどのようなミッションを?
(左:フォースタートアップス仁木、右:黒田)
柳澤氏: 一言でいえば、「KARTEじゃないことを考える」ことです。
従来のプレイドは、主力プロダクトである「KARTE」をいかに良くするかにほぼ全員が向き合ってきました。それはもちろん今でも重要ですし、私も向き合っています。しかし、会社の次の成長を考えたとき、「今のプロダクトの作り方や価値の定義のままで、本当に新しいものを生み出せるのか?」という疑問があった。個別最適の改善を積み上げるだけでは、非連続な成長は望めません。
マーケットが求めるものを形にするだけでなく、まだ誰も気づいていない価値や“未来の当たり前”を自分たちで思考し、創造していく。ビジネスサイドとプロダクトサイドのちょうど真ん中に立ち、事業を企画・開発する。そのための組織が必要だったんです。
仁木:「未来」という言葉が何度も出てきました。柳澤さんが見据える、プレイドのこれからはどのようなものでしょうか。
柳澤氏: まさに今、プレイドは「第二創業期」にあると思っています。これまでのプレイドらしさに加え、新しく加わったメンバーと共に、新しいプレイドらしさを作りながら、企業の価値を大きくしていく非常に面白いフェーズです。
私たちが掲げる「データによって人の価値を最大化する」というミッションを、愚直にやっていく。この「人の価値」というのは、生活者としての顧客体験だけでなく、企業の従業員であったり、社会全体であったり、様々な捉え方ができます。その根底には、究極的には「世の中を幸せにしたい」という私の個人的な思いがあります。物が売れたという成果や実績だけではなく、「良い体験(エクスペリエンス)」を通して、お客様が「いいね」と共感し、誰かに話したくなるような世界を作りたい。
事業は面白いし、伸びしろがめちゃめちゃある。KARTEというプロダクトや既存事業だけでなく、データの価値に本気で向き合おうとしている。これからあらゆるビジネスでデータの価値がより高まっていく中で、我々はすごく良いポジションにいると確信しています。
「KARTEの次」に何が生まれるか、まだ具体的にお話しできないことも多いですが、そのための仕組みづくりや投資は始まっています。そこに対して、一緒に取り組みたいというメンバーも、今、加速度的に集まってくれています。
黒田:最後に、柳澤さんのようにキャリアチェンジを考えられている方へメッセージをお願いします。
柳澤氏: 自分の「今できること(Can)」にこだわらず、「やりたいという意志(Will)」が強い人と一緒に働きたいと、いつも思っています。
意志があれば、CanとWillの差分を埋めるために、人は努力も工夫もする。会社の中でよく「アンラーン(学び直し)」という言葉を使いますが、過去の成功体験や今できることだけで仕事を選ぶのではなく、あえてそれを手放し、より高いチャレンジに取り組んでみる。その差分を「機会」として捉えられる場所を選ぶことが、面白いキャリアにつながるのではないでしょうか。
僕にとって、それがプレイドという成長スタートアップだった、ということです。
黒田コメント
お会いさせていただいた当時、インターフェイスは物静かながらも(アクセンチュア一社で長らく顧客/市場の成長にコミットされ続けてきたからこそ)内に強い“芯”を秘めた方だなという印象を抱いたのを記憶しています。そこからプレイドに入社されて早二年、柳澤さんらしい芯の強さはそのままながらもどこか遊び心のある様な、プレイドの未来に託された“余白”を心から楽しんでおられる様な、そんな姿が非常に印象的でした。柳澤さんの様な素敵な方の転職に立ち会えた事、改めて心から嬉しい限りです。
仁木コメント
実は、柳澤さんとお会いする前に倉橋CEOから「KARTEの会社ではなく、“データによって人の価値を最大化する”会社でありたい。KARTEという素晴らしいプロダクトがあるからこそ見れる、次の挑戦を一緒に創っていける経営人材を探したい。」とリクエストを個別にいただいており、柳澤さんとお話しさせていただいた際に、「倉橋CEOが探されているのはこの方なのでは?」という直感がありました。プレイド経営陣総出の計10回のディスカッションの中で、倉橋CEOがよく使用される「余白」というキーフレーズが柳澤さんからも出てきた際に、私の中での直感はある種の確信に変わりました。ご入社後CSO(Chief Strategy Officer)ではなく、Chief Value Officer(CVO)という価値重視の経営姿勢を示されたのも、プレイド社および柳澤さんらしさなのかなと今回のインタビューを通じて振り返っています。あらためて、これからも柳澤さんの挑戦と、プレイド社の成長を伴走したいと考えています。
黒田 拓海
シニアヒューマンキャピタリスト
フォースタートアップス株式会社ヒューマンキャピタル本部
京都大学卒/一橋大学大学院修了。学生時代に東南アジア拠点のベンチャービルダーやインキュベーション施設でアントレプレナー(起業家)に対する学習支援やコーチングに従事した後、2022年フォースタートアップスに入社。ハイレイヤー/エグゼクティブレイヤーの転職支援やアーリーフェーズのスタートアップに対する採用支援で実績を残し、1年目で新卒の売上ギネス記録を更新。現在はシニアヒューマンキャピタリストとして引き続きハイクラスの転職支援で社内トップクラスの実績を残しつつ、自社の新卒育成の責任者(プロジェクトオーナー)を務める。
仁木 紫援
プリンシパル/マネージャー
フォースタートアップス株式会社ヒューマンキャピタル本部
大学卒業後ベンチャー企業にて事業企画/人事として急成長を経験。その後、20名程のシリーズAフェーズのスタートアップにてSales Enablement、新規事業立ち上げ、SaaS Sales等に従事。2020年フォースタートアップスに入社し、 ヒューマンキャピタリストとして主にシリーズAフェーズのスタートアップを中心に採用支援に取り組む。トップセールス、マネージャーを経て、現在はCxOレイヤー採用に注力するプロジェクトオーナーを務める。